リフォームの基礎知識 PR

火災保険で屋根修理のリフォームができる?
詐欺やトラブルはない?

ここでの内容

・台風などの自然災害で被災した部分の修理には、火災保険が使えます。

・保険会社への資料請求、申請は自分でできます。

・「自己負担ゼロ」「申請代行」を強調する詐欺に注意しましょう。

屋根修理の訪問販売体験談

これは私の体験談で、本格的な訪問販売という感じではないのですが、ある日突然私の家に作業着を着た20代前半位の大工の”兄ちゃん”という感じの男の人が来て、

「この近所で作業を行うので、音がしたり、駐車したり、車が行き来するので、一応断りに来ました」

と言ってきました。

「それはわざわざご親切にどうも」

ということで帰ってもらおうとしたところ、

「お宅の屋根にも壊れかけたところがありますね」

と言ってきました。

私も外に出て一緒に確認したのですが、分かりませんでした。

「素人にはちょっと分かりにくいですけど。」

「近所で使う足場を使うので足場代をタダにできますよ。」

更に

「火災保険を使用すると手出しはタダでできますよ。」

とのことでしたが、突然訪問してきた業者に任せられないので、知り合いの大工に直してもらうということでお断りしました。

「足場代がタダ」というのは詐欺の常套句でして、屋根や外壁の工事の際に登るための骨組みである「足場」は近くから持ってきても運搬や組立、解体に一戸建てなら20万円位かかります。

それがタダになるわけはなく、かかった費用は別の何らかの項目に含まれています。

また無料点検するといって屋根を割ったり、樋を壊したりして修繕したり、ひどい例だとタオルを詰めて流れなくして、それを取って流れるようにしただけで「修繕した」という業者もいますので、点検もさせないようにしましょう。

最後の「火災保険を使えばタダ」というのが最近増えてきたケースですが、実際のところはどうなのでしょうか。

火災保険でリフォームできる?

最近ネットで「火災保険で自己資金ゼロのリフォームを」などの広告をよく見かけるようになりました。

台風などの自然災害が多くなり、被災された方の補修が増えたからでしょうか。

家を持っているならほとんどの方が加入している火災保険でリフォームが出来れば、それは助かると思います。

しかし、怪しい感じもするのではないでしょうか。

火災保険の補償対象は?

まず、火事でもないのに火災保険を使ってのリフォームは出来ないのでは、やれるとしても詐欺まがいの方法ではないか、という印象を持たれる方も多いと思います。

しかしほとんどの火災保険は、火災以外にも台風や暴風雨、洪水、豪雪、ひょうなどの自然災害で被災した際も補償の対象になっており、別途特約を申し込めば地震の場合でも補償されます。

保証対象になっている自然災害によって修理が必要になった時に、リフォーム(修理)代を火災保険から出してもらうのは、何の問題もない、当然の権利と言えますので、積極的に活用しましょう。

現在加入している火災保険で保証されるか、保険証書で確認してみましょう。

火災保険適用の条件は?

でも実際支払われるための条件は厳しいのでは、と思われるかもしれません。

しかし風災(台風や防風での災害)の適用条件は、それほど厳しいものではありません。

風災・水災での適用条件

風災の火災保険への適用条件は最大瞬間風速(3秒間の平均風速)が20メートル/秒という、台風でなくても起こりうる条件になります。

最大瞬間風速は気象庁のホームページで確認することが出来ますので、強風による屋根などの損壊が疑われる場合は、自分で確認してみましょう。

台風でなくても、結構日本のいろんなところで最大瞬間風速20メートル以上の風が吹いていることが分かると思います。

ただし最大瞬間風速20mという基準も絶対ではなく、20m未満でも申請が認められる場合もあり、あくまで目安として考えた方がいいでしょう。

以上のように、風災は補償対象となる条件がわりと厳しくない災害と言えるでしょう。

しかし、条件が厳しいと思われる災害もあります。

水災(洪水など)は床上浸水か地盤面から45cmを超えて浸水した場合など、適用が厳しい条件になっています。詳細は保険を確認してみましょう。

補償金額

保険で補償される額ですが、現状に戻すために修理・補修するために必要な額になります。

ただし、支払われる額の算定基準がそうなっているというだけで、必ずしも現状に戻さなくてはいけないわけではありません。

次の災害で被害を受けないために現状より材質などを良くしようと思えば、足りない分を手出しすればそれも可能です。
逆に修理が必要なければ、保険金だけをもらって修理しなくても問題ないのです。

また保険が適用されないケースもあって、主に下記のような場合です。

・経年劣化・・・修理が必要な原因が時間の経過による劣化と見なされた場合
・施工不良や他のリフォーム、太陽光パネルの設置など人的被害による損傷
・被害を受けた時点から3年以上経っている
・修理費用が少額・・・以前は20万円以下は補償されないのが一般的でしたが、今は免責金額(自己負担する額)が保険ごとに違います。

また保険金額から経年劣化分が引かれる場合もあります。

例えば、

修理に必要な金額(100万円)ー経年劣化で価値が下がった金額(20万円)=保険金(80万円)

となります。

 

火災保険の申請手続き

やったこともないし申請手続きは難しいのでは、素人には出来ないのでは、と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

CMで自動車保険などの対応の様子が出ていますが、火災保険も連絡すれば同じように丁寧に対応してくれます。

代理店で加入している人は、そちらに問い合わせても大丈夫です。

手続きの手順は以下のようになります。

①保険証書を確認し、保険会社に連絡する。

「先日の台風で屋根の瓦が飛んで、雨漏りがしている」などと状況を説明して、申請に必要な資料を請求します。

直接保険会社に連絡してもいいですし、火災保険の代理店で申し込んだ人は代理店に連絡しても大丈夫です。

②申請書類の作成

保険会社(代理店)から下記の書類が送られてきますので、記入します。

保険金請求書・・・本人の住所、氏名、証券番号、他に同様の保険に入っているか、保険金の振込口座などの簡単な情報です。

事故状況説明書・・・事故の状況を簡単な文書やイラストで説明します。
この2つの文書は簡単ですので、自分で作成可能です。

例えばAIG損保での記入例は下記のとおりです。

自分が入っている火災保険でも記入例を確認してみましょう。

次の二つは、リフォーム会社(屋根の修理業者など)にお願いすることになります。

・修理の見積書
・損害状況の写真

見積書はもちろんですが、修理状況の写真も、屋根などの高所など危険な場所の場合もありますし、必ず業者は見積もりの時に確認するので、一緒にお願いした方がいいでしょう。

ここでリフォーム会社に依頼するわけですが、時間があれば通常のリフォームと同じように数社から相見積もりをとる際に、損害状況の写真もお願いしましょう(有料の場合もあるので無料であるかも確認しましょう)。

相見積もりを取った場合、一番高い価格を選びたくなりますが、適正な価格・見積内容でないと保険の支払い自体がされにくくなりますので、大手リフォーム会社やリフォーム販売会社ではなく、屋根の修理業者や工務店の見積を提出しましょう。
(業態による価格の違いはリフォーム費用の内訳は?差が出る理由を分かりやすく説明をご覧ください)

屋根が破損しての雨漏りや外壁が壊れての水漏れなどが発生している緊急の場合は、とりあえず1社に見積もりと保険申請用の写真をお願いして申請を進めて、後から改めて相見積もりを取るという方法もあります。

③保険鑑定

保険会社から依頼を受けた第三社の保険鑑定士が鑑定のため災害を受けた現場に来ます。

本来は必ず来て確認することになっていますが、台風などの災害時は申請が集中することもあり、少額の場合や見積もりが適正と判断された場合は来ないこともあります。

④保険金の決定

申請を基に保険会社で審査が行われ、支払い金額の連絡が来て、入金されます。

経年劣化で元々傷んでいたなどの理由で保険金が全額支払われない場合もありますし、経年劣化分が引かれるなどして、見積もりの金額よりも支払い額が安くなる場合もあります。

⑤修理の開始

リフォーム会社(工務店など)にリフォームを申し込みます。

2.で1社から見積もりを取った場合は、相見積もりを取って比較してみましょう。

現状通りに回復するだけでしたら価格の比較になりますが、今後被害が出ないように材質や工法の提案をもらって、グレードアップするリフォームをしてもいいでしょう。

その場合、保険会社からの出た以上の価格は、手出しになります。

 

火災保険を使った詐欺・トラブルの例

以上のように自然災害による損壊の修理に火災保険を使うこと自体は問題ないことですが、問題なのは火災保険を悪用した詐欺が増え、トラブルが発生していることです。

詐欺の事例には下記のようながパターンあります。

①「自己負担ゼロ」を強調する

「火災保険を使って自己負担なしで修理できる。」などと持ちかける方法です。

費用の負担がないということで損することはないので、悪いことはないような気がします。

しかし築年数が経っていれば経年劣化などの理由で全額支払われない場合も多く、一部か、もしくは全く支払われない場合もあります。

火災保険の保険金が申請通りに全額支払われるかは、申請してみないと分からないので、最初から自己負担ゼロを強調してくる業者は信用しない方がいいでしょう。

申請前に契約をして保険金が支払われなくて修理を止めたい場合や、業者を変えたい場合でも高額な違約金がかかるため止められないなどのトラブルが考えられます。

②申請代行を持ちかける

火災保険が使えると分かっても、申請が面倒では、難しくて自分では無理などと考えて申請されない方が大多数です。

そこに申請代行の話が来れば、手間もかからず簡単で、少しでも保険金がでれば得と考えて依頼される方もいます。

しかしそもそも保険の申請は保険の契約者自身がしなくてはならないことになっており、代行といっても上記の修理の見積書や損害状況の写真の準備や、書類の書き方や保険会社との受け答えを指導するぐらいの補助を行う程度です。

このような業者は申請代行から修理の工事まで一連の契約をすることが多く、相見積もりなどで他の工事業者と比較することが出来ず、工事はその業者に依頼するしかなくなります。

利益を上げるためとにかく原価を安くしようとする業者もいて、粗末な材料やずさんな手抜き工事をされても泣き寝入りとなります。

また後から高額なコンサルタント料、申請サポート料などの名目の費用を要求されるというトラブルも発生しています。

申請の手続きところにも書きましたが、申請は簡単で自分でできますし、何かあったら保険会社に相談しながら進められるので、代行業者は避けた方がいいでしょう。

③強引に契約させる

無料点検などで破損している箇所が見つかると、危ないので早く修理が必要とか、キャンペーン中なので今日中に申し込みが必要などと言い、契約するまで帰らず居座るなどして強引に契約させる業者がいます。

保険金が思うようにでなかったり、気が変わったりして修理の工事を行いたくない場合でも、工事予定金額の5割など多額の違約金を支払う契約になっていたり、見積もりや診断費用を請求されたりする場合があり、注意が必要です。

また悪質な業者の場合、急いで契約させて契約書は後回しだったり、契約書の控えを置いていかなかったりして、後から契約内容の確認やクーリング・オフ(無条件解約)もやりにくくしようとする業者もいます。

業者の説明に少しでも納得できないことがあったら契約しないことが大切です。

特に馴染みのない電話勧誘や訪問販売の業者には注意が必要です。

また支払い後も工事が行われないという例もありますので、契約時に安易に前金を支払わないように気を付けましょう。

④うその理由での申請をさせられる

屋根などの損傷を見つけ、実際は経年劣化による場合でも自然災害によるものとして火災保険申請することを勧める業者がいます。

実際に災害による被害を受けた場合でも、それ以外の箇所の工事も災害によるものとして申請させたり、悪質な業者だとわざと瓦を割って破損をひどくするなどして、保険金を多く引き出そうとする業者もいます。

実際と違う理由で故意に保険金請求をしたことが分かれば、保険金が支払われなかったり契約の解除をされるだけでなく、保険会社をだますのに加担したとして、刑事罰である詐欺罪に問われる可能性もあります。

軽い気持ちで行っても、取り返しのつかないことになるかもしれませんので、絶対こういう誘いには乗らないようにしましょう。

最近はネット上のポイントサイトでのポイントをもらえる条件として外壁や屋根の無料調査を受けさせ、火災保険を申請させようとする手口の例もありますので、関わらないようにしましょう。

詐欺への対策

まずは火災保険の保険金を使い自己資金なしで修理を行う、保険申請も代行するなどと電話や訪問で持ち掛けてくる業者を相手にしたり、またこちらからホームページから申し込まないことです。

多少面倒な気はしても保険は自分で申請して、通常のリフォームと同じように相見積もりをとって3社ぐらいを比較すれば、問題はありません。

保険の申請に必要な見積もりや写真をもらう時に、費用がかかるかどうかを確認さえしておけば、後で面倒なトラブルに巻き込まれることありません。

ネットで調べると火災保険の申請専門の業者があり、できるだけ多くの修理箇所を見つけ出し多くの保険金を取ることを売りにしていますが、そのような業者も実際の修理は下請けに安くやらせようとしますので、外れの修理業者に当たる可能性もあります。

大事なのは修理することですから、ちゃんと業者が選べるよう自分で保険金を申請し、欲張らずに少しでも賄えたらラッキーぐらいに考えましょう。

またプロは多くの被害の出た多くの箇所を見逃さず申請する、というのも売りになっていますが、火災保険は被害を受けた日から3年後まで申請できます。

同じ箇所について何度も保険申請するのは無理ですが、同じ災害で違う箇所の損害に後から気づいても、それはまた保険金を申請できますので、一度に全てを見抜くプロでなくても大丈夫です。

あまり欲張って悪徳業者に関わることのないように、まずしっかりした業者を選び、きちんとした修理を行うことを心がけましょう。